今回の“夏うた”は、スチャダラパーの「サマージャム’95」です。
スチャダラパーは、3人組のヒップホップ・ユニットで、
1994年にリリースした小沢健二とのコラボ曲
「今夜はブギー・バック」で大ブレイクしました。
マッチョな“ゴリゴリ系”ラップではなく、“オモロ・ラップ”。
コミカルな歌詞(リリック)の魅力にハマって、
ヒップホップ系の音楽を知らない私でも当時よく聴きました。
“夏うた”といえば、ノリノリで盛り上がろうぜ!とか、
爽やかな青春のシーンに似合う応援ソングだとか、
ひと夏のせつない恋の思い出を歌う曲がほとんどですが、
この「サマージャム’95」は、そうではありません。
インスタ映えするような素敵な夏の思い出ではなく、
等身大の若者(男)たちの “夏のあるあるネタ”です。
(スチャダラパーのメンバーは、昭和40年代前半の生まれ)
むしろ「夏に流されて」ダラダラ過ごしてしまう、
ダメダメな若者の日常をゆる~い感じで歌っています。
「みんな そそのかされちまう
ついつい流されちまう
結局暑さで まいっちまう
誰のせい?それはあれだ!夏のせい」
(「サマージャム’95」スチャダラパー 1995)
全歌詞は、こちらからどうぞ。
https://www.uta-net.com/song/22745/
この曲がリリースされた1995(平成7)年といえば、
ほとんどの若者がまだケータイ電話を持ってなくて、
インターネットも普及していなかった頃です。
(※1995年の携帯電話の普及率は10%程度、
インターネットの普及率は調査が開始された1996年で3.3%)
21世紀生まれの世代には、わかりにくい歌詞かも知れません。
「ワーイ 手離しで浮かれたい 夏大好き とか言っちゃったり
ってのが出来ない 構えちまう 安々と乗ってたまるかってところもある
なーんて言いながらも 夏用のテープとかはしっかり作るのよ
“サマージャム’95” なんつって 必ず直球のタイトルつけちゃってね」
(「サマージャム’95」スチャダラパー 1995)
「夏用のテープ」というのは “カセットテープ”のことですが、
実物は、こんなのです。

昭和生まれの若者は、音楽をラジオやレコード(後にCD)から
この “カセットテープ”に録音して、持ち運んでいました。
“夏うた2023”とか、直球のタイトルをつけちゃったりして、
カーステレオでテープの曲を流しながらドライブしたり、
好きな人に自分が作ったテープをあげたりしていたのです。
「そーそ となりにキャワユイ ギャル 乗っけて
湾岸流すなんて よからぬ絵 描いちゃってね
「この曲好き」 なんて言われちゃう感じね
「アレ なんかいい風」 とかね
夏に流されちゃダメって思いながらね
イキのいい車に道あけつつも
夢のひとつも 語っちゃったりすんの」
(「サマージャム’95」スチャダラパー 1995)
ドラマやコントなどで、よく描かれるシーンとセリフです。
この歌詞の前に「みんなで徹夜あけ レンタカーで」とあるので、
彼らはだれも自分の車を持ってないようです。
「よからぬ絵 描いちゃってね」ともあるので
当時の男たちがあこがれた、あるあるネタですね。
妄想はさらに続きます。
「そーなるって事は もーあれだ
熱めのお茶だ 意味深(しん)なシャワーだ
で 手もちぶさたでつけた ラジオから
こんな曲 流れたりすんだ」
(「サマージャム’95」スチャダラパー 1995)
「熱めのお茶だ 意味深なシャワーだ」とは
サザンオースルターズの「夏をあきらめて」からの引用、
和歌の世界では、“本歌取り”と呼ばれる手法です。
「潮風が騒げば やがて雨の合図
悔しげな彼女とかけこむ Pacific Hotel
うらめしげにガラスごしに 背中で見てる渚よ
腰のあたりまで切れ込む 水着も見れない
熱めのお茶を飲み 意味シンなシャワーで
恋人も泣いてる あきらめの夏」
(「夏をあきらめて」サザンオールスターズ 1982)
サザンには、素晴らしい“夏うた”がたくさんありますが、
この「夏をあきらめて」も、そんな名曲の一つです。
また、ヒップホップの曲には、別の曲の一部分を使って
新しい音楽を作る“サンプリング”と呼ばれる手法があります。
この「サマージャム’95」では、ジャズのヴィブラフォン奏者、
ボビー・ハッチャーソンの「Montara(モンタラ)」(1975)
という楽曲がサンプリングされています。
元ネタに興味のある方は、こちらもどうぞ。