6人が選んでくれた“夏の歌” 26曲(私も含めて31曲)のうち、
1人が1位に、もう1人が2位に選んだのが、aikoの「花火」でした。
ポイント制なら、今回堂々のトップ賞です。パチパチパチ。
aikoの「花火」がリリースされたのは1999 (平成11)年なので、
2001-02年生まれの22歳にとっては、生まれる前の曲です。
「花火」は、「カブトムシ」と並ぶaikoの代表曲の一つ。
毎夏TVやラジオ番組が企画する「夏の歌」ランキングでは
必ず上位に入るほど夏の定番曲になっているので、
後の世代の若者が耳にする機会も多いのかも知れません。
さて。いったいこの曲の魅力は、どこにあるのか?
もいちど、じっくり聴いてみましょう。
最も印象に残るフレーズは、やはりこの部分でしょうか。
「夏の星座にぶらさがって上から花火を見下ろして
こんなに好きなんです 仕方ないんです」
(「花火」aiko 1999)
初めて聴いたとき、花火を“見下ろす”というアイデアに驚きました。
当時「花火をどこから見るか問題」というのがあって、
もともとは1993年に岩井俊二監督によって提起されたものです。
最初はテレビドラマ作品として作られ、1995年に映画化された
『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』です。
この岩井監督の作品を原作とする同名のアニメ映画が
2017年に公開されましたが、その主題歌となったのが
DAOKO×米津玄師による、あの「打上花火」です。
さて、話をもどすと、
1990年代の「花火をどこから見るか問題」に対して
Aikoが放った「上から花火を見下ろして」というぶっ飛んだ歌詞に、
日本中のクリエーターや若者が衝撃を受けたものです。
すいません。誇大表現でした。
もう少し、ていねいに当時の印象をたどってみます。
「夏の星座にぶらさがって上から花火を見下ろして
こんなに好きなんです 仕方ないんです」
(「花火」aiko 1999)
夏の星座とは、いったい何座だろう。
“夏の大三角形”を構成する白鳥座、琴座、わし座あたりか。
南の空に輝くS字のカーブ、さそり座かもしれない。
いや、そこまで考えて歌詞を書くだろうか、と我に返り、
なんだか少女マンガのヒロインの妄想シーンか、
アニメのエンディング曲のようだなと思い直しました。
歌詞の中には「三角の目をした羽ある天使」や
「三角の耳した羽ある天使」が登場してきて
恋のアドバイスをしてくれちゃったりもします。
ファンタジー要素ましましの世界なのかと思いきや、
そんな天使のアドバイスが妙に人間くさくてリアルなのです。
「疲れてるんならやめれば?」とか、
「一度や二度は転んでみれば」とか、
なんか経験豊富なオバちゃんぽいのが微笑ましい。
どうも、恋をきっぱりと忘れることはできなさそうだし、
かといって、恋につき進める状況でもなさそうだし…。
Aiko、どうする?
いつまでも夏の星座にぶらさがって、
夢ばかり見ていられないことは、
自分でもよくわかっているのではなかろーか。
きっと手も痛くなるだろうし。
曲の最後には「バイバイ」と歌ってるので、
この恋にサヨナラするしかなかったのでしょう…。
ただし、歌詞にある「花火は消えない 涙も枯れない」とは、
花火(=恋)の思い出は、けっして消さないという決意でしょうね。
そしてまた、恋にサヨナラした悲しみも決して消えずに
思い出すたびに涙するだろうという予感なのかも知れません。
くーっ、せつない。
「花火」はキレイだけど、一瞬で消えるはかなさが、
せつない夏の恋や青春の象徴として好まれるのでしょうか。
春の「さくらソング」と、夏の「花火ソング」は、
Jポップの風物詩となっています。
今回選ばれた他の曲から、花火の歌詞を上げておきます。
「決して捕まえることのできない
花火のような光だとしたって
もう一回 もう一回 もう一回 もう一回
僕はこの手を伸ばしたい」
(「HANABI」Mr.Children 2008)
「もうすぐ花火が上がるね
君の横顔を今焼き付けるように じっと見つめる」
(「わたがし」back number 2012)
「パッと光って咲いた 花火を見ていた
きっとまだ 終わらない夏が
曖昧な心を 解かして繋いだ
この夜が 続いて欲しかった」
(「打上花火」DAOKO×米津玄師 2017)
どーんと派手な打ち上げ花火も夏らしいですが、
二人だけで地味に楽しむ花火もなかなかオツなものです。
「この細い細い うら道を抜けて
誰もいない大きな夜の海見ながら
線香花火に二人で ゆっくりゆっくり火をつける」
(「夏色」ゆず 1998)
こんな歌詞のようなシーンに、今でも多くの若者が
あこがれていることでしょうし、多くの大人が
遠い日の花火を思い出していることでしょう。
結論。やっぱ、夏は若者が主役の季節ですね。