22歳が選んだ「夏うた」 (その4)

今回は、ガールズバンド対決!
SHISHAMOの「君と夏フェス」(2014)と、
SILENT SIRENの「八月の夜」(2015)の2曲です。

ガールズバンドについては、ほとんど知りません。
SHISHAMOは、ぱっつん前髪のボーカルの印象しかなくて、
SILENT SIRENは、今回はじめて聞きました。

この2曲に限っていえば、「八月の夜」の方が好みで、
1回聞いただけで、そのノリのよさにシビレました。

SHISHAMOは、高校の軽音楽部で結成したバンドで、
この「君と夏フェス」は、なんと高校卒業の翌年に発表し
スマッシュヒットを記録した曲だそうです。凄いですね。

歌詞は、「まだ照れ臭い」関係の男の子を誘って
夏フェスに参加し、やらかしてしまった女の子の内面を
可愛いらしく、コミカルに描いたストーリーです。

10代ならではの、はじけるような元気感と
ウブな恋心をぎゅっとパックしたような一曲です。

この曲の歌詞に仕掛けられたギミックは、
止まらない」というキーワードです。

ライブの前には「止まらないのは私の汗」、
止まらないのは夏への期待」とあって、
ライブが終われば、置き去りにしてしまった彼と
時間が止まっているみたい」と見つめ合う
ちょっと気まずい瞬間がやってきます。

しかし、彼のやさしい言葉によって、
なんとも照れ臭いハッピーエンドを迎えます。

止まらないのは二人の恋だ
 今年の夏よ 終わらないでよ

そう。
曲は終わっても、二人の夏は永遠なのです。

ところで、実際に夏フェスに行ったことのある
10代って、どれくらいいるのでしょうか。

「ラインリサーチ」の2023年の調査によると、
音楽フェスに参加したことのある人は、
10代では18%(男性:21%、女性:15%)だそう。

ただ、大きな野外フェスだと交通費もかかるし、
お金のない10代(とくに地方在住の若者)だと、
はるかに低い数字なのではないでしょうか。

そういう意味でも、10代の若者にとって
「君と夏フェス」に行くなんていう体験は、
いつかは…とあこがれてしまう場面です。

さて一方。
SILENT SIRENも人気ガールズバンドですが、
こちらはファッション誌の読者モデルによって
結成されたバンドだそうです。(どうりで可愛い)

「八月の夜」という曲は、「微妙な距離」の二人が
迷路を進んでくように」探り合いながら、
だんだん距離を縮めてゆくストーリーになっています。

主人公は、さっきの夏フェスの二人よりもオトナです。
(ミュージックビデオでは、大学生の設定のようです)

とりあえず、聴いてみましょう。

歌詞も、10代の若者にはちょっと理解しにくい、
大人仕様のレトリックが駆使されています。
たとえば、こんな表現。

さら さら さら さら なびくふたりの
 まだ まだ まだ まだ 微妙な距離も
 ゆら ゆら ゆら ゆら 揺れる気持ちも
 微(かす)かに指先が君に
 振れる 触れ 溢れ 重なる

歌詞をよく読まないと気づかない差異ですが
この「指先」は、歌の途中で「唇」へと変わります。

微(かす)かに が君に
 振れる 触れ 溢れ 重なる

「フレル・フレ・アフレ」という音も心地よいのですが、
心と体が振れる、触れて、溢れて、重なるという
性愛のイメージへと導く一連のたたみかけが見事です。

ウブな男子だと、ころ ころ ころ ころ 転がされそう。

そして曲の最後では、こうなっています。

八月の夜にふたりは
 振れる 触れ 溢れ 重なる

秘めやかな「八月の夜」のドラマが
疾走感のある軽快なサウンドに乗って
アニメ声のボーカルで歌われるのですから、
その手のカワイイ系女子が好きな男子には
たまらない魅力なのじゃないか。

あざとさ上等!

そんな言葉さえ思い浮かべてしまう名曲です。

22歳が選んだ「夏うた」 (その3)

Mrs. GREEN APPLE「青と夏」は、
2018年夏に公開されたキラキラ映画『青夏 きみに恋した30日』の
主題歌として書き下ろされた楽曲だとか。知らんかった。

流行りの音楽を追いかけない昭和のオッサンでも、
Mrs. GREEN APPLEの名前は、最近ちょこちょこ聞きます。
ただ楽曲については、あの“髯男”っぽいやつ?くらいの認識で
んなことを口にすればファンに叩かれてしまいそう。

【人気投票 1~223位】邦楽の夏うた・夏曲ランキング!
夏に聴きたいおすすめのサマーソングは?
2023年の夏に実施されたインターネットの人気投票では、
数ある“夏うた”のなかで、「青と夏」が堂々の第1位でした。
(※2023年8月24日現在)

なぜ、「青と夏」は、こんなに人気があるのか。

映画の方は、そんなに大ヒットしたようでもないので
やはり、楽曲のよさが多くの人の胸に届いたのでしょうね。

夏らしいアップテンポのバンドサウンドで、
歌詞の内容は、映画の内容に沿った青春応援ソングです。

大人になってもきっと 宝物は褪せないよ
 大丈夫だから 今はさ に飛び込んで居よう
(「青と夏」Mrs. GREEN APPLE  2018)

「青に飛び込もう」とは、青い海にダイブするように
思いっきり青い季節に飛び込め、というエールでしょうか。

夏が始まった 君はどうだ
 素直になれる勇気はあるか

私みたいなスレた大人になってしまえば、
ストレートな“青い”歌詞をハズかしく感じたり、
その素直さが眩しく、うらやましくも思えます。

この「青と夏」で面白いのは、映画の主題歌でありながら
あえて「映画じゃない」と、くり返し歌っている点です。

まだまだ終われないこの夏は
 映画じゃない 君らの番だ
 映画じゃない 僕らの
(「青と夏」Mrs. GREEN APPLE  2018)

NHKの人気TV番組「ブラタモリ」の主題歌で、
ハローハロー お元気? 今夜なにしてるの?
 TVなんか見てないで どこかへ一緒に行こう」(「女神」2015)

と、井上陽水が誘いかけているのと同じ手法ですね。

夏休みを舞台に、初々しい青春の恋を描いた名曲は
たくさんありますが、YUIの「Summer Song」もその一つ。

太陽が味方する 日に焼けた君が手をふるから
 期待してんだ 約束の季節に飛び込む 人魚みたいに
(「Summer Song」YUI 2008)

「青と夏」よりも10年前の曲ですが、
やっぱり、「約束の季節」(=夏)に飛び込んでます。

「青と夏」では、「に飛び込んで居よう」という
レトリックが使われていましたが、
「Summer Song」にも印象的な“青”の表現があります。

ヘコむ毎日 取り戻す日々 君に会って 笑いあって
 “真っ赤なブルーだ” 
(「Summer Song」YUI 2008)

「真っ赤なブルー」って、どんな色でしょうか。
え? と引っかかって、おもわず想像してしまう。
断言してるからには、そこに何か意図があるはず…。

昭和の歌姫、美空ひばりのヒット曲にこんなのがあります。

真赤に燃えた 太陽だから 真夏の海は 恋の季節なの
(「真赤な太陽」美空ひばり 1967)

「Summer Song」の“真っ赤”は、太陽だけではありません。
ギラギラの夏と海、なにより青春の “熱さ”を表現するのに
真っ赤なブルーだ」というパンチラインが効いています。
言い切る強さが、主人公の思いの強さとも重なります。

曲そのものは、決して暑苦しくはありません。
YUIの軽やかな歌声と爽やかなアコギサウンドを
甘酸っぱい青春ドラマ風の動画で聴かされてしまうと
脳の視床下部がくすぐられて、たまりません。

大人のクリエーターたちが寄ってたかって、
理想的な青春時代を描いてそそのかすから、
みんな夏に飛び込んでしまいたくなるわけですね。笑